布団の豆知識

1.睡眠の大切さ

デスクワーク中にあくびをする男性

コンビニが24時間営業している現代社会では、昔のように昼と夜のメリハリがはっきりしなくなっており、日本人の4人に1人は眠りについての悩みを持っているといわれている。
人間は本来 明るくなったら目覚め 暗くなったら眠る生活をしてきたが、電灯の発明により暗くなっても起きていることが多くなり、睡眠障害の人も増えている。
眠ることは、昼間働いた身体を休め 脳を休める人間にとって大事な生命現象。
睡眠中には、脳を守り活性化させるとともに、身体組織の新生や修復・免疫機能の増強、ストレス解消の支援などの作業も実行されている。
従って、睡眠が不足すると

①生体の防御 維持機能が低下して健康全般に悪影響を与える。(風邪をひきやすくなる。感染症にかかりやすくなる。)
②成長ホルモンの分泌が阻害され、子供の場合は特に心身との成長が阻害される。
③生活習慣病のリスクが増える。睡眠不足で食欲亢進ホルモンが増加して、肥満につながり、糖尿病高血圧等のリスクも高まる。
④脳機能が低下、論理的思考ができなくなりやる気も喪失、キレやすい子供たちが増えたり、お年寄りでは認知症の原因にもなる。また、記憶の定着も睡眠時に行われており、学習効果も睡眠を十分とったあとの方が出る。

2.よい睡眠とは

①すぐ眠れる
②ぐっすり眠れる
③気持ちよく目覚める
④適度な睡眠時間が確保されている

①寝床に入って入眠までに要する時間(入眠潜時)は30分以内
②眼球運動、筋電位からなる睡眠ポリグラムにより、良質な睡眠がとれた場合の睡眠中の睡眠図は下記のようになっている。
質のよい睡眠は、ノンレム~レム睡眠のサイクルが規則的(ほぼ90分サイクル)にあらわれ、中途覚醒が少ないこと。
睡眠前半にあらわれる徐波睡眠(深い睡眠)がしっかり確保できており、睡眠中盤から後半にかけて出現するレム睡眠が中途半端で途切れずまとまっていること。
ノンレム~レム睡眠の睡眠周期が4~5回繰り返されるうちに、ノンレム睡眠の段階が浅くなり、やがて朝を迎える。

レム睡眠とノンレム睡眠
  • レム睡眠(rapid eye movement)
    眼球運動をともなった睡眠。筋肉は脱力しており身体を休める睡眠といわれる。
    この時期に夢をみる。
    記憶の整理も行われている。
  • ノンレム睡眠
    比較的深い睡眠、脳を休める睡眠といわれている。
    不必要な記憶の消去、精神的ストレスの消去の役割も担う。

③熟眠感のある目覚め…朝方レム睡眠が終わったころに丁度目覚めるとすっきり目覚められる。
④適度な睡眠時間には、年齢によって違い個人差もあるが、平均的には7時間前後といわれている。
日本人の睡眠時間は年々短くなっており6時間未満の割合が、1970年は約7% 2000年は約18%と増加、子供の就寝時刻も午後10時以降に寝る子供の比率は、1980年は22%、2000年は52%と増えており睡眠不足による生活の質の低下が心配されている。

3.よい睡眠を得るために

①人
ガッツポーズのスーツの男女

規則正しい生活を送ること。
昼間の活発な活動力が夜のよい睡眠につながります。
人には体内時計があり、自然界と同じ24時間のリズムを刻んでいます。
この体内時計が夜の睡眠と昼の覚醒の繰り返し現象(睡眠-覚醒サイクル)を刻んでいます。
夜になると自然に睡眠促進ホルモン(メラトニン)が分泌され眠くなり、朝になると覚醒を促すホルモン(コルチゾール)が分泌され目覚めるしくみになっています。
このリズムをこわさないような規則正しい生活がよい睡眠を得るための第一条件です。
睡眠の前に 例えばパソコンを長時間扱うなどで光を浴びるとリズムが狂い入眠しにくくなります。
また、体温も24時間のリズムで変化していますが、入眠時には体温が下がるという特性があるので、入眠前に入浴して一時体温を上げてやり、その後下げると入眠しやすくなります。

②寝室環境

静かなこと、暗いこと、寒過ぎず、暖か過ぎず、冬は13~21℃、夏は24~28℃、湿度は50~60%くらいが望ましい。
寝室は北側にあることが多く陽が当たりにくいためジメジメしがちなので気を付けたい。

4.よい睡眠を得るための寝具の条件

イ)寝床内の気候 温度は33℃±1℃ 湿度は50%±5%

人の体温は、概日リズム(サーカディアンリズム)による体内時計で昼と夜では約1℃の差がある。
明け方の4時頃が最低で、夕方の4時頃が最高。
夜、眠りに入る少し前から、手足などの抹消の皮膚の温度が上昇し放熱して体温が下がる。
体温を下げるもう一つの役割が発汗。
人は眠っている間にコップ一杯の汗をかくといわれているが、汗をかくことで体温を下げ入眠を促している。
従って、発汗によって湿度が上昇しては寝床内がジメジメして眠りにくくなる。
また、睡眠時には体温が下がるので、起きている時と違い寝床が温かくないと快適な睡眠が得られない。
研究の結果(奈良女子大等の研究)から温度は33℃±1℃ 湿度は50%±5%が寝床内の快適温湿度と結論づけられている。

ロ)寝姿勢

眠りに就くと筋肉は弛緩しダラリと抜けた状態になる。
眠っている間は自分の力で姿勢は変えられず、寝具によって体を支えることになるので、正しい寝姿勢を保つためには寝具が重要なポイントとなる。

人は立った時の姿勢がそのまま横になった状態が快適な寝姿勢といわれている。

良い姿勢、いい眠り
正しい寝姿勢での体圧分布

従って、寝具が柔らか過ぎると重い胸部臀部が下がり腰が持ち上がって、体がW字形になる。
すると、腰周辺の負担が大きくなり腰痛の原因となる。
また、寝具が硬すぎると、臀部が持ち上がって腰のカーブが不自然になり、加重が胸や尻に集中して強い圧迫感を覚えたり、筋肉が緊張して安眠を妨げる。

5.適正な『寝床内環境』と『寝姿勢』を得るために寝具に求められる条件

①保湿力

夜になると体温は下がりはじめ、明け方まで下がり続け、午前4時前後に最低になる。
パジャマを着ただけで布団をかけずに寝ると風邪をひいてしまう。
睡眠時の体温の変化や寝室の冷気から体温を保持するため、寝具には保湿性が絶対条件です。
冬期は寝具からの放熱が掛よりも敷のほうに多いので、敷布団の保湿力も大事。
保湿力のあるふとんに寝ていれば、寝返りなどで調整して自然に33℃±1℃の快適温度になる。

  • 羽毛の保温力
    ダウンはたんぽぽの綿毛のような形状をしており空気をたっぷりと包み込むため、カサ高性に富み温かく、現在ふとんの中わたに使用されている繊維のなかでも一番保温力に富み科学の力でも真似ができない。
  • 羊毛の保温力
    独特のちぢれ(クリンプ)があって空気を包み温かい。
    また、熱伝導率も低いため、外部の冷たい空気を防いでくれる。
    汗となった水分を羊毛が吸収する時に吸着熱を発するので暖かい。
②吸湿発散性

発汗によってふとんの中をジメジメした状態にせず、寝床内を50%±5%の湿度を保つためには寝具に吸湿発散性があることが大事。
寝具が汗の湿気を吸収して、外に積極的に放湿することで快適な快適な湿度が保たれる。

  • 羽毛羊毛共に吸湿発散性に優れた素材。
    特に羊毛は繊維の表面がウロコ状になっており、その特性で吸湿発散しているのに表面は乾いた状態を保てる。
    純毛のコートが雨が降っても水をはじき しかも蒸れないのを見ても、その性能が解る。
    ヨーロッパでは100年以上前から布団の素材として使われており、さわやかな健康寝具として知られている。
③寝姿勢
  • 特に敷布団に求める条件
    柔らかすぎず硬すぎないこと。
    正しい寝姿勢になるように体をしっかりと支え、表面は体圧が重い臀部に集中しないようにクッション性があることが望ましい。
  • 羊毛敷布団
    適度な弾力性と硬さがあって、正しい寝姿勢をサポートしてくれる。
    固わた入りは中芯の固わたが寝姿勢を支えてくれるが、羊毛100%のものは、下にマットレス、できればお尻が沈み込まないバランスタイプのものを使用することをお勧めします。

6.寝具選びの大切さ(よい寝具の条件)

①まず、信頼できるお店での購入をお勧めします。
基本的なことですが、インターネット等では、誤表示や過剰な表示が問題になっている折、慎重に考えられたほうがよいと思います。

②公的機関・準公的機関のお墨付きがあること。

  • 羽毛布団なら、日本羽毛製品協同組合が羽毛のカサ高性によって一定の基準を定めてラベルを発行しているので参考にして下さい。
  • 羊毛布団の場合は、英国羊毛公社やザ・ウールカンパニーのウールマークが参考になります。
  • 寝具全般には、全日本寝具寝装品協会が発行しているGFマークがあります。

7.寝具の買い替えの時期の目安

通常、掛ふとんは5年、敷ふとんは3年といわれています。
ふとんの使用期間が長くなると、汗などの不純物が布団の側生地や詰めものに付着するので日頃のお手入れ、リフォーム、買い替えが必要です。

「よい眠りを考える」(メディア出演多数)

よい眠りを考える